戸定の昆虫 2008-4 (10〜12月)


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2008年10月1日(水)

 今日から後期の講義が始まります。このページの更新も行わないとと、3年生を連れて隣の戸定邸に
行きました。隣にあるのに行ったことがない学生が多く・・・

     
 行く途中に歩いていたらいきなり落ちてきたというオオミズアオの幼虫です。もしかしたら寄生蜂とかに
やられているのかもですが、カエデの枝につけてあげました。そういう意味ではずるい写真です。胸脚を
合わせて祈っているように見えました。

        
 トリバガの一種が戸定邸近くの葉にとまっていました。種は今度調べますが・・・多分わからないかな・・・
特徴的なとまり方ですね。

       
 落ち葉にいましたが、元気がなかった幼虫。その時は思い出せなかったけどこれはツマグロヒョウモンの
幼虫ですね。今は成虫もたくさん見られます。成虫の写真を撮りたいのでもう少し頑張ります・・・しかし
この幼虫の配色は凄いですね。明らかに毒がありそうですが・・・でも毒はありません。

2008年10月2日(木)

 ほ場に出たので写真撮りました。

 
 ほ場のニンジンはこれまでキクキンウワバがいなかったのですが、このところはよく見かけます。秋に
多くなるという南方系の種の特徴を示しているのか・・・いろいろ明らかにしていきたい問題です。右の
ような繭も見られました。成虫の写真もおみせしますね。

     
 アカトンボ系のトンボが2匹いました。こちらはナツアカネで下はアキアカネのようです。もう少し
ちゃんと同定しなくては言い切れないですが・・・

     
                    アカトンボも色づく季節になっていますね・・・

2008年10月7日(火)

 調査でほ場に行きました。
     
 オクラについていた黄色いラインのまぶしい?この幼虫はフタトガリコヤガの幼虫でした。
たくさんいました!オクラは収穫期を過ぎていたので薬もまかれないだろうから天国みたいです。
花を食べている個体もいましたが、よく見るとオオタバコガでした!

     
 サツマイモの葉にたくさん見られるナカジロシタバの幼虫です。こちらはオレンジ色のラインが
入っています。こういう配色も警告色になっているものや、逆に隠蔽色になっているものもあるようです。
いろいろ調べてみるとおもしろいかもですね。

    
 比較的大きなハチが飛んできてとまってくれました。同定はあとで行います。できるかな・・・
腹部のところが全く見えないのですが、黄色だったらジガバチ系だったのに・・・

  
カラムシの葉を見たらギンモンシロウワバがとまっていました!野生のキンウワバの写真を撮れるのも
嬉しいです。グレーに細いですが赤いラインが入っているところがおしゃれなウワバです(笑)。
学名は Macdunnoughia purissima といい種小名の "purissima" は「清浄な(ものすごくピュアな)」
というような意味なので、この配色に対する評価は高いのでしょうね・・・

2008年10月10日(金)

 いろいろあってほ場にカメラを持って行ったら良い写真が撮れたので・・・言い訳ですが・・・
 先ずは樹液コーナーですが・・・・
   
 やはりルリタテハが来ていました。複数種が来て交代で蜜を吸っていました。成虫越冬だから
この時期の個体は美しく、きれいですね!春の越冬終了個体も撮りたいです。このほかにも
キタキチョウやキタテハなど成虫越冬個体が元気に活動しているので、彼らの写真も撮りたい
ものです。右にいるヒカゲチョウは幼虫越冬のようです。

       
 ふと見たら片隅にコクワガタがいました。と思ってあまり気にもとめなかったのですが、
あとから写真を見ると大あごの突起がコクワは上の方にあると思いましたが、根元に近いですね・・・
小さいヒラタクワガタのような気もします。ストロボにおびえてすぐに引っ込んでしまい・・・
また確認します。

  
 秋の花壇にいろいろな昆虫が来ています。このところ凄く数が多いツマグロヒョウモンです。一生懸命
蜜を吸っていました。この個体はメスです。今度はオスも撮らないと・・・

     
 ホシホウジャクはホバリングして吸蜜します。シャッタースピード速くしたので見事に翅が止まって
くれました!会心の作で嬉しいです。忙しいのにもっと撮りたくなります・・・・

     
 こんな花に来るチョウやガなどをじっと狙うハラビロカマキリです。彼女はあちこち移動しながら
花の近くで獲物を待っていました・・・ホシホウジャクはちょっと速すぎるようでしたが・・・
 また観察してみたいです・・・

2008年10月13日(月・祝)

 虫を飼っていてその餌取りにほ場に行くので、ついつい写真も・・・忙しいのに更新ばかりして
また忙しいのを信じてもらえないかもしれません・・・

       
 ほ場の入り口でウラギンシジミが吸水していました。こうしてみるとなかなかかわいいチョウです。
今はこうして地面から吸水していましたが、動物の糞から吸水していることもあるのでした(笑)

       
 ツマグロヒョウモンが今日も花壇に!メスは警戒心無く吸蜜していましたが、オスは近くに
寄らせてくれません。これも擬態効果の有無が行動を支配しているのでしょうか?メスの黒と白の
帯はカバマダラに擬態しているとされていますが、オスはこの模様が無く擬態していないことに
なるからです・・・このあたりにカバマダラはいないから擬態効果はどちらもないのにおもしろい
ものです・・・

       
 花にはハチ類もきています。これはオオハラナガツチバチのようです。夏から秋までみられるよう
ですね。触角が長いので、この個体はオスです。

       
 クマバチはそれこそ初夏から秋までみられます。木の枝に孔を空けて巣を作るから英名は
carpenter bee といいます。木の枝から本当にきれいな丸い孔をあけて出てきたときは感動しました。

   
 そろそろ秋も深まりニホンミツバチの巣が心配だと見に行ったところ、もうやられていました!
数年前と同じくはやりオオスズメバチです。この巣は出入り口が多かったから逆にあちこちからの
攻撃に弱かったのかもしれません。まだ外をニホンミツバチが飛び回っていたので襲撃されてから
間もないと思われます。ここは頑張って近づこうとカメラを手に接近しました。

       
 裏側にもたくさんいました。脚立で上がったら警戒され、私のすぐ近くまで襲ってきて大あごを
カチカチいわせる威嚇音を出されました。学部生の時以来かな・・・久々に聞きました。なかなか
恐怖を感じる音です。この写真では、私を警戒している個体が、左下にいるのがわかりますね・・・

2008年10月21日(火)

 忙しい日々も少し脱しましたが、まだまだです・・・少し写真撮りました。

      
 トンボの交尾写真はいつも撮ろうと思っても撮れず・・・ようやく写真になりました。
アキアカネでしょうか・・・

 ニンジンのキクキンウワバはいろいろ御難続きで成虫にはなれない個体が多いです。
学生時代の観察でもそうでしたか、ここでも秋のキクキンウワバは、ほとんどが
死んでしまうようです。

          
 クチブトカメムシの幼虫にやられていました。このカメムシはシロヘリクチブトカメムシのようです。
まだ幼虫です。成虫が、先日圃場にもいたから、確実に定着しているようですね。
 このように、生育途中にやられてしまう個体もいますし・・・成長しても・・・・

     
 終齢になっても、繭を作り出すところで、体内に寄生していたキンウワバトビコバチが一気に
成長し、ちょっと分かりづらいですが、体中に数千ものハチの幼虫が充満する状態になります。
この数千匹のハチは、1個か2個の卵が分裂して出てきたもので、この不思議な生殖様式を
「多胚生殖」といいます。ものすごくびっくりする生殖方法ですね・・・
 秋のキクキンウワバはほとんど成虫になれないと思っていますが、それでも絶滅することなく
成虫も多く見られます・・・寄生者と被寄生者・・・昆虫の不思議な世界の一端ですね・・・

2008年10月22日(水)

 試験で使うキャベツのアブラムシを探しに矢切に行きました。当然、普通のキャベツ畑では農薬で
アブラムシは期待できないのですが、減農薬や家庭菜園狙いです・・・

     
 家庭菜園のブロッコリーにはオオタバコガもいました。実験に使うので、もっと採集に行かなくては・・・
行ってみて良かったです。


       
 そして、その家庭菜園のブロッコリーの葉を穴だらけにしていたのは、キンウワバたちでした・・・
無農薬だと他の害虫もたくさん出てきそうなのに、なぜか優占種になる事が多い、不思議な奴らです。
ここではイラクサギンウワバが圧倒的に多かったです。
 これで、松戸産の個体群を知人に送ることができます。

2008年10月27日(月)

 圃場整備があったので、カメラも持参しました。

       
 ヒメアカタテハが花にきていました。結構ゆっくり蜜を吸っていました。このチョウも成虫越冬の種です。
幼虫でも越冬するようですが、地域によっては幼虫は死滅するようです。

       
 ハギとかメドハギが植わっているせいか、学内にキタキチョウが多く飛んでいます。でも全然とまって
くれないので、吸蜜をねらいましたが、慌ただしくてやはり無理でした・・・そしたら急に葉上で休んで
くれたので、撮影できました。裏面の斑紋が現れる秋型の翅です。

         
 オクラの葉裏にはイラガの幼虫がいました。恐らくテングイラガでしょう。広食性のようですが、
オクラにもつくんですね。びっくりしました。繭を作り前蛹の状態で越冬するようです。

 更新ができませんでした・・・11〜12月は講義とかその他諸々で、全く余裕がありませんでした。今は
12月末ですが、年越しの仕事も多くいろいろ迷惑もかかっています・・・この更新だけはと思いましたが、
本業優先で・・・写真もあまり撮っていなかったので、少しですが、今年最後の更新です。


2008年11月4日(火)

 学祭も終わり、晩秋の学内に出ましたが、意外に昆虫は見つかりました。

     
 カラムシにつくフクラスズメは、この時期になっても小さな幼虫から大きな幼虫まで姿が見られます。
成虫越冬のはずですが、蛹で越冬とかあるのかもしれませんね。調査してみたいものです。成虫の姿は
この後もほとんど見られません・・・

    
 キタキチョウが、日なたぼっこしていました。翅のラインはお日様の影ですが、こういう写真も良いかなと
このままで出してみました。越冬前の残り少ない活動時期を楽しんでいるようでした。

     
 樹液の出ている樹も、樹液量は少なくなっているようです。葉が落ちてしまえば、樹液の流れもほとんど
無くなってしまうことでしょう。残り少ない餌をヒカゲチョウがあさっていました(笑)

 
 3年生の手にとまったヒトスジシマカを撮影しました。彼らももうすぐ姿を消します。右はこの時期にも
いるのかと驚きましたが、チュウレンジハバチです。初夏からずっとバラは食べられ続けていますね(笑)。
日差しがあるとまだいろいろ見られるので、また出ようと思ったのですが、カメラを持っての学内は、今の
ところこれが最後になっています・・・


2008年11月11〜13日(火〜木)

  
 仕事で淡路島に行きました。小高いところから見下ろすと、夜間照明をしているハウスが見えました。
寒くなってきたので、時期的には遅かったのですが、害虫防除に役立つ夜間照明ハウスを見られて、
嬉しかったです(笑)。

  
  路地のキクでもこのようなライトが設置してあります。そんなに遠くないところに海も見えます。

     
 夜間照明の対象害虫であるヤガ類の幼虫は見られませんでしたが、このような小さなカスミカメムシが
数多くいました。これは、ウスモンミドリカスミカメムシです。調べてみるといろいろな色彩の個体が
いるようで、赤っぽいような個体もいるようです。ここでは、このようなタイプの個体が、多い
ような気がしました。

 
 翌日は、帰り際に加古川の河川敷で、テントウムシを探しました。すっかり晩秋でしたが、ウラナミシジミと
キタキチョウは数個体見られました。光沢の翅が美しいウラナミシジミです。

         
 テントウムシは、ナナホシテントウしかいませんでした。他のテントウムシは越冬に入ったようです。
ナナホシテントウは、春早くから見られますが、秋も遅くまでいるようですね。

2008年11月20日(木)

  
 昆虫好きの2年生が「緑色のコカマキリを見つけた」と、持ってきてくれました。以前も学内で見かけた
ことがありましたが、カメラを持っていなかったので、今回は撮影することができて、感謝です。
 ほとんどみかけない、ということは、劣勢遺伝的な色彩なんでしょうけど、以前は緑色が多かったのが、
今は、その生活環境で褐色が多くなったのか、とかいろいろ考えてしまいます。

2008年12月27日(土)

 今シーズンで4年目になるフユシャク観察会、シーズン中に何回か行くと思いますが、先ずは行ってみました。
今年最後のイヴェントですが、戸定ではないものの掲載して2008年を終わりにします。


 成虫の数はまだ少なく、私が見つけた個体はこれだけでした。でも私はいつも見つけるのが下手で(笑)1匹も
見つけられないときもありますから、上出来でしょう(笑)これは、シロフフユエダシャクの様です。メスにも
前翅、後翅ともに退化はしているものの、小さな翅があります。

        
 こちらは、ウスバフユシャクのオス個体です。オスは翅を持っているから飛翔できます。でもこの日はあまり
飛んでいませんでした。

         
 トイレの壁にいたチャバネフユエダシャクのオス。この種は初冬に出現します。だから今回はこの種の
交尾などが見られると嬉しかったのですが、残念でした。メスは過去に一度見たことがありますが・・・

 さて、フユシャク以外にも冬季に見られる昆虫は、それなりにいまして、ちょっと驚きます。今回は
そういう種類も紹介してみましょう。


 左がカオマダラクサカゲロウで、右はスズキクサカゲロウのようです。クサカゲロウ類は、成虫越冬する種も多いのですが、
こんな寒くなってきた夜にいるのはどうしてなんだろうと思います。餌をとるとかは考えられないのですが・・・手すりの木とかに
とまっているのが多いので・・・でも弱っている感じもしません・・・                                                       
      
 ヤマトクサカゲロウは、成虫越冬時にはこのように体色が褐色に変わります。彼らも越冬時に隠れているのでは
なくて、こんなふうに見つかります。でも上の2種よりは越冬個体が見つかるのは、ここでは少ない様に感じます。

     
 何とこの時期にコカマキリがいました。寒さに耐えているようですが、まだ生きています。どうしてこんな
時期に生きているのか気になります・・・もうすぐ死んでしまうのか?まだ産卵とかするのか?まさか越冬?
次回にまた探してみたいです。

           
 毎年のことですが、サクラの樹で、ヨコヅナサシガメが越冬しています。少しくぼんだところとか
うろみたいになっているところで集団越冬しています。この場所にはフユシャクシーズンしか行かないので、
夏とかに行けば、成虫の行動も写真撮れると思います。行ってみたいなあ・・・

     
 同じくサクラの樹の樹皮にとまっているキノカワガです。こうしてアップで見れば分かりますが、少し離れた
ところから見ると何も分かりません。実に見事な隠蔽擬態です。キノカワガは、年2化でこの世代は成虫越冬です。
成虫越冬というのは、かなりリスキーな気がしますが・・・頑張ってほしいものです。

2008年12月28日(日)

           
 日中、暖かいと外壁などに潜んでいるナミテントウが、動いたりしています。もう少し冷えると動かなく
なるようですが・・・今年最後の写真は自宅の壁でした(笑)。

 いよいよ今年も終わりです・・・11月に入って更新できなくなってしまいましたが、この時期はこういうもの、
ということでご了承下さい。1〜2月もいろいろあるので、滞りそうですが、頑張ります。

 では皆様、良いお年をお迎え下さい。来年度もよろしくお願いいたします。


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