戸定の昆虫 2019-1 (1~3月)


 皆様にとっても良い年になりますように・・・本年もどうぞよろしくお願いします。


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  1月 26日(土) 

  新年早々からテンション下がることがあり、元気ではありませんでしたが、毎年恒例のフユシャク
 観察に出かけました。急に決まったのでほとんど声もかけず出かけてしまい、すいませんでした。
 一緒に行ったのは写真家でもある研究者とフユシャクの研究者だったので、いつもよりたくさんの
 フユシャクを観察することができました。また行きますので今度は声もかけます。
  今回は合計8種ものフユシャクを見つけることができました。最後に紹介する種はこれまで
 本当にみたいと思っていた種だったので、かなり感激しました。
  では今回は、少し真面目にフユシャクの分類順に紹介していこうと思います。
 
 Geometridae シャクガ科
  Ennominae エダシャク亜科
  ヒロバフユエダシャク Larerannis miracula
  
  木の幹に止まっていましたが、これまでだったら「あとで調べよう」となりますが、今回はすぐに種名が
 わかる人と一緒で有り難いです。関東では2月上旬から出現する種のようなのでちょうど出始めのようです。
 美しい個体でした。

  シロフフユエダシャク Agriopis dira
  
  
  この種も出現は2月のようですが、近年早く出ているようなので今出ていてもおかしくないようです。
 メスについては初めて確認しました。これまでも見ていたかもしれませんが、近縁種の形態があまり
 変わらないメスは同定しづらく・・・このメスはコーリングしていましたが、オスは来ませんでした。
  
  シモフリトゲエダシャク Phigolia sinuosaria
  
  全国各地で見られるものの、個体数は多くない種だそうで「広く薄くいる種」みたいです。この個体は
 帰る際に壁に止まっていましたが、大型種なのでメスも見たかったなあ・・・
 
  フユシャク亜科 Alsophilinae
  クロテンフユシャク Inurois membranaria
  
  2月頃から次のウスバフユシャクに入れ替わって多くなるフユシャクですが、和名にだまされて大きな
 黒点を持つ個体を撮影しても、ウスバフユシャクのことが多いです。特徴はこの個体のように?やや白っぽく
 そして外横線(翅の先の方の目立つ黒点がある線)がまっすぐではなく「くの字」に角張るという特徴が
 あります。今回はやはり研究者の方が見つけてくれました(笑)

  ウスバフユシャク Inurois fletcheri
  
  この個体は黒点は大きいですが、外横線(翅の先の方の白線と黒線)がまっすぐなので、ウスバフユシャク
 です。クロテンフユシャクよりは色が茶色っぽいのも特徴です。この生田緑地では毎年たくさん見られる
 最普通種ですが、今年もオスメスや交尾個体など多く見られました。
  
  
  あちらこちらでオスが見つかります。
  
  翅のないメスも多くはこのウスバフユシャクだと思われますが、メスの形態だけで種を同定するのは
 難しいようです。この個体はコーリングしていましたが、付近をたくさんのオスが飛んでいたので
 来ないかとみていたところ・・・
  
   やってきました!でも交尾したのかよく見えない・・・
  
  
  オスが横並びになって、腹部を動かしていましたが、その後動きも止まってしまったので、交尾の完了を
 見届けることはできませんでした。でもこんな状況での交尾過程なのかなと思います。
  
  交尾が成立してペアになっている雌雄もたくさん見られました。
  
  今年はオスが翅を立てている個体が多く見られ、満足しました。
  
  
  という感じで、多くの個体が見られると良いものです。大学でも探してみようと思いました。
  
  ウスモンフユシャク Inurois fumosa 
  
  翅の先が丸いこの蛾はウスモンフユシャクでした。これまでも見ていたかもしれませんが、ウスバに
 紛れて全然気がついていませんでした。この種はそろそろ出終わりのようです。全国にいますが千葉県
 だけ発生が確認されていないようです。大学や家の近くで探してみたくなります(笑)
  
  同じ個体を横から撮っただけですが・・・ウスバとかよりは小さめでした。

  ナミシャク亜科 Larentiinae
  ナミスジフユナミシャク  Operophtera brunnea
  
  これは毎年見られる種ですね。メスの翅は退化していますが、比較的大きいのが特徴です。
  
  今日も何個体かを見ることができました。このナミスジフユナミシャクについては、メスしか見ていなく
 て、これまでオスは知らなかったのですが、研究者はさすがです。
  
  木の幹に止まっている個体を見ただけで、ナミシャク系のオスは翅を立てて止まっていることが多い
 そうで、それで区別できるということでした。いやあ勉強になりました。
  
  しかも手で風を当てたりしたら、翅をべたっと開きました。これからやってみるかな・・・ということで
 今後の観察に役立つ情報でした。

  イチモジフユナミシャク  Operophtera rectipostmediana
  
  さて、上のナミスジフユナミシャクに似た種で、メスの翅が緑色になっているイチモジフユナミシャクを
 一度見てみたかったのですが、12月後半が多いらしく、これまで見る機会はありませんでした。ところが
 帰り際の木にいるところを見つけてくれて大興奮!
  
  図鑑や他のサイトなどに出ているようなはっきりした緑色ではなかったものの、かすかに緑色を呈する
 翅を見ただけで大変嬉しい気持ちになりました!!!来年度は産地を案内してくれるそうで楽しみ!
  
  以上の8種がフユシャクでしたが、今年はフユシャクばかり撮影していて、他には以下のヤガ3種だけ
 撮影しました。蛾以外の撮影はゼロというのも初めてかもしれません・・・いずれも成虫越冬の種です。

  ヤガ科 Noctuidae
  キノカワガ亜科 Bleninae
  キノカワガ  Blenina senex
  
  キノカワガです。この場所にでは毎年観察できますね。樹皮に擬態する蛾ですが、この個体は周囲の
 樹皮の色とは少し違い、隠蔽できていませんでした。

  キリガ亜科 Xyleninae
  キリガ族 Xylenini
  キリガ亜族 Xylenina
  カシワキボシキリガ Lithophane pruinosa
  
  その名の通りカシワとかを寄主植物にする蛾のようです。でも成虫越冬をわざわざするのも大変な気が
 します。なかなかハードな生活史です・・・
  
  ヨスジキリガ Eupsilia strigifera
  
  この蛾に至ってはそれなりに毎年見ている気がしますが、寄主植物は不明のようです。春になって
 産卵するので今採集して飼育しても卵も産まないのでしょうし・・・そして年1化という生活史だと
 研究もしづらいですしね・・・

  相変わらずテンションは低いものの、やはり昆虫観察は良いですね。自然は嘘つかない(笑)

  1月 4日(金) 

  仕事始めで少し時間がとれたので、昆虫の写真を撮りに出ました。越冬中の個体を狙いましたが
 なかなかいない・・・ふと木の幹を見ると・・・
  
  何と!マエアカスカシノメイガがいます!まだ新しい個体なので、本来は初春に羽化する蛹から
 この陽気で、もう成虫になってしまったようです。これから寒くなるので大丈夫かしら・・・
  
  ヤツデの花が咲いていました。晩秋から咲いているので花は珍しくないですが、結構冷えている日陰
 なのに、ハエが普通に吸蜜していました。種名はわかりませんが、ハエは冬でも活動するものが多いです。
  
  久々にイセリアカイガラムシを見つけました。講義で紹介しているものの姿を見たのは本当に
 久しぶりで嬉しい。うちのミカンの樹に放虫しようかと思います・・・(笑)これだけ発生すると、
 その昔、カリフォルニアの柑橘が大打撃を受けたのも頷けます。確認できて嬉しくなってしまったら
 果樹の先生に「植物病学の先生も病気見つけて喜んでいましたから同じ気持ちですよね?」と
 妙に理解されてしまいました(笑) ということで有意義な時を過ごせました。 

  1月 1日(火) 

  謹賀新年  こちらでは穏やかな少し温かいお正月を迎えています。
  自宅付近でオオカマキリの卵鞘を見つけました。
  
  やや小ぶりなので最初の卵鞘ではなく2番目なのか、小さい個体か、あまり栄養を蓄えられ
 なかったのかも・・です。
  
  同じ樹にもう一つありました。こちらの方がさらに小さいから3番目??

  本年もどうぞよろしくお願いします。  


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