2002 戸定の昆虫

2002年8月22日(木)

 
今年の夏も暑い日が続いています。このところは湿度が低いので,人間にとっては過ごしやすいです。酷暑も峠を
越えた のでしょうか?昆虫も真夏は初夏などに比べると目につく個体数などは少なく感じます。観察者がバテている
こともあるでしょうけど,夏眠と言って夏を寝て過ごす種類も多いことから実際に種数や個体数も少なくなっている
のです。
 盛夏に活躍する昆虫たちを紹介しましょう。

  
 ジガバチは地面を掘って巣を作り,その中にガやチョウの幼虫を捕まえてきて体表に卵を産みます。これらの幼虫は殺されている
 のではなく,麻酔をかけられた状態なので,卵から孵化した幼虫は"生きた"餌を口にすることができるのです。ファーブル昆虫記
 にも登場する狩人蜂が学内でも見られます。この蜂はダイズの葉をあちこち探し回っていました。しばらくはある狭い範囲を探し
 回っていたので,何か葉の食害痕や独特の臭いなどに反応しているのかもしれません。ジガバチの他にもクモを狩るベッコウバチの
 仲間も見かけました。

 
 寄生蜂に寄生されたスズメガの幼虫

 スズメガの幼虫の背中に俵?が乗っています。これはこの幼虫の体内を食べていた(もしくは体液を吸っていた)寄生蜂の
 幼虫が背中で繭を作って蛹になっているものです。スズメガの幼虫はまだ生きていましたが,恐らく成虫にはなれないと思い
 ます。こんなふうに外で繭を作るものの他に体内で蛹になって成虫が外に食い破ってでてくる種もいます。寄生蜂は餌である
 寄主側の生体防御反応をコントロールするなど生理学的にも非常に魅力的な研究材料です。

  
 翅を広げて休むムラサキシジミ

  ムラサキシジミは翅を広げると綺麗な紫色の光沢が輝き、かなり美しいチョウだと思っています。この個体は古いので色が
 あせてしまっていますが、次には新鮮なな個体も撮影しようと思ってはいます・・・。近縁種にムラサキツバメというチョウが
 いますが、このチョウは最近関東地方に進出してきています。既にこの付近でも定着していますので、いつか写真をお見せ
 できればと思います。

 
 ヤマトクサカゲロウ

 自分の供試虫を紹介することをしていなかったような気がします。まあ積極的に紹介する機会を設けても良いのですが,
 これまたそのうちの企画として・・・。ここではヤマトクサカゲロウを紹介します。実験材料としては彼らの種内変異を見て
 います。近々公表いたします。幼虫はアブラムシ等を食べる益虫となっていますが,この成虫は花粉などを食べる植物食です。
 緑色のきれいでか弱そうな昆虫に見えますが,実は幼虫は肉食だったりするわけです。ヨツボシクサカゲロウなどは成虫も
 肉食性を示します。

 
 翅を伸ばしたミンミンゼミ

 セミの羽化の写真を連続して撮影するというのがずいぶん前からやりたいと思っていることです。でも毎年なぜか叶わず
 にいます。忙しいとかそんな理由もあるのですが、どうせ撮るなら翅の透き通ったミンミンゼミの写真にしたいなぁという
 のも強い気持ちです。昨年の写真ですが、調査から帰ってきたときに校舎の裏側で翅を伸ばしたばかりのミンミンゼミに
 出会いました。今年は最初からと思っていましたが、今は校舎裏は改修工事のために掘り返されていて、やはり叶わずに
 至っています。近いうちに何とか・・・

 
 休んでいるオニヤンマ

 オニヤンマは日本最大のトンボですが、いつも空高く悠然と飛んでいるイメージがあります。しかし実際には結構低い
 ところを飛行していることもあります。そんな低いところを飛んでいたオニヤンマがこれまた低い木の枝に止まって
 くれたときの写真です。あまり動かず絶好の状況だったのに絞り込みすぎてしまい、こんな夜みたいになってしまいました。
 オニヤンマは水面に腹部先端をたたきつけるように産卵するのですが、一度そんな豪快な場面を写真に撮りたいものです。

  
 ミミズを食べるアオオサムシ

  じつはこの写真は飼育下でのアオオサムシの写真です。ですから野生状態ではないのですが,餌を入れた落とし穴トラップを
 仕掛けるとこの時期もまだかなりの数のアオオサムシが見られます。餌としては釣具屋さんで売っているさなぎ粉を用いますが,
 その他のものでも(すし飯の元とか黒ビール黒砂糖と焼酎を煮たものとか)地表徘徊性の昆虫が罠にかかります。
  そんなオサムシを捕まえてきて,室内で撮った写真ですが,園芸学部産なのでお許しを!

2002年4月13日(土)

 2002年はいつになく季節が早く動いています。例年ならまだ見ることが出来ないアゲハチョウがもう飛翔していました。
 例年は学生実験の最初に見せることができたツマキチョウはもう発生が終わりそうです。園芸学部の春の風景を感じてください。

 
 ツマキチョウ(タンポポにとまるオス)

  春早くに学内を飛んでいる白いチョウというと、モンシロチョウだと思われがちですし、実際に学生に聞いても、みんな
 モンシロチョウだけだと思っています。本当は4種類いるよ、と教えても信じてくれません。モンシロチョウの他にスジグロ
 シロチョウにモンキチョウのメスが白いチョウですが、もう1種、このツマキチョウは他の白いチョウより小さく、せかせかと
 羽ばたいてあまりとまってくれないのが特徴です。オスは翅の先が黄色くなっているのでこの名がありますが、よく見れば
 飛翔中でもこの黄色を確認することができます。今の時期にしか出現しないのも何か応援したくなります。いつまでも
 発生してほしいですね。

 
 ベニシジミ(きれいな個体とぼろの個体)本日撮影

  どちらも同じ日に撮った写真ですが、左の新鮮な個体に対し、右の個体はだいぶ翅が痛んでいました。幼虫越冬の
 ベニシジミですからどちらもこの春に出てきたはずです。早くから出てきた個体はこんなにぼろぼろになるくらい生きて
 いるのかもしれませんね。
 ベニシジミは日当たりの良いところにいますけど、不思議ととまる時は枯れ草とか石とかの上やそばが多いです。
 そういう習性なんでしょうけど、彼らの翅の色合いからするとどんな効果があるのか知りたくなります。

  
 ツツジ咲く中のサンクガーデンとA棟 
本日撮影

  園芸学部の春はなかなか美しいものがあります。サクラの後はあちこちに植えられている色とりどりのツツジが我々の
 目を和ませてくれます。4月の中旬にもなっていないのにもうこんな景色になっています。BC棟の南側にもツツジが
 植えられていましたが、改修のために全て移植されています。来年はどんな形で帰ってくるのでしょうか・・・。

 校舎改修の他にも新たに道路が建設されています。あちこちの景色も紹介していくことにしましょう。今回はこのへんで。

2002年4月14日(日)

 マサキの病害虫
 春先のマサキの生け垣を見てみると、いろいろな虫を見ることが出来ます。以前にも紹介していますが、見てみましょう。

  
 ミノウスバ:若齢幼虫の食害(左)と終齢前の幼虫

  ミノウスバはマサキの新芽の出始めに孵化してこれを食害します。食われた新芽の部分は枯れてしまうので、著しく
 美観を損ねます。また終齢になるまでは集合していますので、葉もどんどん食べられてしまいます。今の時期は終齢に
 なり単独で葉の裏などにいます。
  今年こそは秋に出てくる成虫の写真を載せたいものです。

  
 ユウマダラエダシャク成虫(左)とうどん粉病

  ユウマダラエダシャクもマサキを食べるガの仲間です。日中はこのように休んでいますが、夕方遅くにはひらひら
 飛んでいたりします。モンシロチョウが夕方飛んでいると思っている人もいました。右のうどん粉病はたいていのマサキで
 見ることが出来ますが、中には写真のようにひどくなっている場合もあります。まるで何か付けているかのようです。